国連が定めたハッピーデーを知っていますか?【映画で学ぶ!世界の今】

様々な社会課題に関連する映画を配給するユナイテッドピープルが映画で学べる世界のトレンドや知っておくべき現実について紹介するコラムです。

第2回 国連が定めたハッピーデーを知っていますか?

世界的に知られている記念日を挙げるとしたら、何を思いつきますか?クリスマス、バレンタイン、ホワイトデーなら誰もが知っていますよね。今回紹介する記念日は、国連が定めた記念日、国際幸福デー(International Day of Happiness)、通称ハッピーデーです。

東日本大震災後に来日したブータン国王が届けてくれた励ましのメッセージ

ブータンの様子(C)Wadi Rum Films 映画『happy』のシーンより

東日本大震災から半年ちょっと経った2011年11月に、ブータン国王夫婦が来日しましたが、国王が国会で日本を励ます演説をして下さいました。

「いかなる国も国民も、決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮に、このような不幸からより強く大きく立ち上がることができる国が一つあるとすれば、それは日本と日本国民である、私はそう確信しています。皆様が生活を再建し復興に向けて歩まれる中で、我々ブータン人は皆様と共にあります。我々の物質的な支援はつつましいものですが、我々の友情、連帯、思いやりは心からの真実であるものです」
衆議院「ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク・ブータン王国国王陛下国会演説」(2011年11月17日)

被災地、東北にも夫婦で訪問されたブータン王国夫婦の心温かい行動は多くのメディアで紹介されました。

ブータン王国が導入したGNHが世界の潮流に!

ブータンの女性(C)Wadi Rum Films 映画『happy』のシーンより

そんな心優しい国王夫婦の国、ブータン王国は、人口約76.5万人(2014年:世銀資料)(※)、面積は九州とほぼ同じぐらいという小さな国にもかかわらず、ブータンの取った国家の画期的な方針から世界中で有名になりました。それがGNHです。
外務省 ブータン王国

GNHが何の略だか知っていますか?GNHとはGross National Happinessの略で、国民総幸福量の意味です。これは、一国の経済力を計るGNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)と対比されるコンセプトです。ちなみにGNPはGross National Product、GDPはGross Domestic Productの略です。

このGNPやGDPで国の良し悪しを測ることは多くの経済学者が問題点を指摘していましたし、約半世紀も昔の1968年には、ロバート・F・ケネディ元米国大統領も「国の富を測るはずのGNPからは、私たちにとっての価値あるものすべてが抜け落ちている」と演説しました(※)。
国連大学ウェブマガジンOurWorld「国の包括的な豊かさ」(2012年9月4日)

ケネディ元米国大統領の発言の背景には、急速な経済成長が引き起こす環境破壊などの弊害が顕在化したことがあります。日本でも1950年代後半から1970年代の高度経済成長期に四大公害病が発生するなど、経済成長だけを求めても国民は幸福に暮らすことができないと実感していた時期です。

そんな頃の1971年、アジアの小国ブータンのジグミ・ドルジ・ウォンチュック第三代国王が国連で発展のゴールは「国民の繁栄と幸福」という趣旨のスピーチを行いました。この考えは、第四代国王のジグミ・シンゲ・ウォンチュック国王に受け継がれて、彼が国王に就任した年に「我々の国の方針は、国や国民の為に経済的独立、繁栄、幸福を実現し国をまとめることだ」と語り、GNHが導入されたのです(※)。そして、ブータンのGDPではなくGNHを最大化しようという取り組みは、今や全世界で知られるようになりました。
ブータン政府観光局「国民総幸福量:ブータンの哲学の発展」

国連が動いた!国連が世界の人々の幸福を願ってハッピーデーを制定

(C)Wadi Rum Films

2011年7月にブータン首相の呼びかけにより、国連で歴史的な決議が通過します。国連加盟国に幸福度の調査を求め、その結果を活かすことを求めた決議です。その結果、2012年4月に世界幸福度報告書(World Happiness Report)が発表されました。そして2013年からは毎年3月20日が国連の定める国際幸福デー(International Day of Happiness)、通称ハッピーデーが制定されました。ちなみに最新の世界幸福度報告書2015によると日本のランキングは158ヶ国中47位と、経済大国の割には下位に位置しています。

人類の究極の目標と言ってもいい幸福度を高めることを国連がこのように呼びかけたことは、大変意義深いことに思います。そもそもどうしたら幸福度を高めることができるのか?そんな疑問の答えを探すために、ブータンを含む世界5大陸16か国を巡る4年間の旅の成果がまとまったドキュメンタリー映画が、『happy – しあわせを探すあなたへ』です。この映画を観たら、幸福度が高まるコツが見つかるかもしれませんよ。

今年のハッピデー3月20日は、周りの誰かを笑顔にするなど、ぜひいつもと違った過ごし方をしてみませんか?東京では、HAPPY DAY TOKYO 2016が開催されます。

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