『アパレルパタンナー』ってどんな仕事?【気になるカタカナ系職業を突撃取材!】

こんにちは、大学生ライターの西野です。このコーナーでは憧れるけど謎の多い、カタカナ文字の職業をご紹介します。

今回は「パタンナー」という職業の謎を解き明かしていきます!今回取材に伺ったのはこちら!

有名アパレルブランドのTOMORROWLAND の本社にやってきました。ビルのウィンドウからすでにお洒落です。

ここで一つ、私は重大な過ちを犯してしまったことに気づきました。

有名アパレルブランドで取材をするにも関わらず、ファッションに気合を入れてくるのを完全に忘れていました。(まだ気温が27度もあるのにニットのカーディガン羽織ってるのはだいぶ恥ずかしいのでは…!?)

というのも、恥ずかしくなるくらい、すれ違う社員の方がお洒落なんです。雑誌のファッションスナップを見ている気分になるくらい…、さすがファッション業界。

今回は、そんなTOMORROWLAND でパタンナーをされている伊藤哲子さんにインタビューをさせていただきました。

(オフィスの一室にはこんなショールームも!)

---伊藤さん、本日はよろしくお願いいたします!それではまず、パタンナーがどういったお仕事なのかを教えていただけますか?

服を制作する過程で、デザイナーさんからもらったデザイン画や写真といったデザインの情報から、パターンを作る仕事です。パターンというのは、平面のデザイン画から洋服を作る時に必要となる型紙のことです。

---どういう流れで型紙をつくるのですか?

まず、紙に作図をして、それをシーチングという白い布で仮縫いをして立体にしてみます。その立体になったものをデザイナーと確認したり、着てみたりする中で試行錯誤をくり返してパターンの修正をしていきます。そうして、最終的に工場の人がそれを見ただけで縫製ができるようなパターンと縫製仕様書を作ります。こんな感じで、洋服のデザインを実際に製品にするための作業全般に関わっています。

---デザイナーさんからのデザイン画や生地の写真といった情報で、パターンを作るのはすごく難しそうです。

そうですね。作ったパターンで、実際に仮布でつくった洋服を標準体型のモデルさんに着せてみて“イメージと違った”となることはあります。デザイナーさんとイメージの共有が上手くいかずに、すれ違ってしまうことは時々ありますね。そういう時は、何度も話し合ってお互いに納得がいく着地点を見つけています。あとは、一緒に他のブランドのお洋服を見に行ったり、同じものを見る時間を過ごすのは大事だなと感じています。

---お仕事をしていて、どんな時に楽しいと感じますか?

デザインをもらって、一番最初のファーストパターンを引くときですかね。かわいくできるかな?と考えながら引いているときが楽しいです。

---毎月どれくらいのパターンを作るのですか?

数えたことないんですけど、今担当しているブランドの場合は、展示会が秋冬に2回、春夏に2回あり、1シーズンで引くパターンはだいだい70型位で、それをパタンナー4人で分担しています。加えて、全シーズンの修正や検品、追加企画も同時進行しています。

---パタンナーがどういったお仕事なのか、よく分かりました。もしよろしければお仕事の実例を見せていただけませんか?

---これは何のパターンですか?

これはワンピースの型です。デイリーに着ることができるフレアのワンピです。素材のことも考慮して、その生地に合ったパターンを作ります。

---印がたくさん書き込まれていますね。これは何ですか?

ポケットやファスナーの位置など、作る際の指示が書いてあります。

---すごく細かいところまで書いてあるんですね。だいぶ時間がかかりそうに思えるのですが、ファーストパターンを引くのにはどのくらいの時間がかかるのですか?

モノによるのですが、2時間でひけてしまうこともあれば、3日かかることもあります。コートやジャケット類はパーツが多いから難易度が高くて、パンツも結構難しいです。最近はパターンを初めからCAD(コンピューターを用いた設計)で作る会社が多いのですが、私たちは紙で引くのを大事にしています。

---次は伊藤さんの学生時代のお話をお聞きしたいと思います。高校時代には、どのように進路を決定されたのですか?

元々理系だったのですが、学力にあまり自信が無かったので、手に職をつけられるような仕事がいいかなと思っていました。その頃は美容師や服飾系が流行っていた時代だったこともあり、自分もそういう業界がいいなと漠然と考えていた気がします。それで、なんとなく進路が決まってきた高3の頃から、服を作るのって楽しいかもと思い始めて、たまにバッグや服を自分で作っていました。服飾系だと、専門学校という選択肢もあったのですが、私は大学には行ったほうがいいなと思っていたので、4年制大学で服飾造形を学べる唯一の大学だった文化女子大学(現:文化学園大学)に進学を決めました。

---ファッションに興味を持ったのは何かキッカケがあったのですか?

当時、美容院のカットモデルをしていたのですが、美容やファッション系の仕事をしている方とお話する機会があって、自然とファッション系もアリだと思っていました。あと、その頃から60年代のアーティストにすごくハマり始めて、そのアーティストだったり当時の女優さんだったりのマネをして古着を買ったりしていました。

特に60年代後半の古着ファッションが大好きだったんです。50年代のクラシックな感じから、60年代のファッションアイコンのジェーン・バーキン、ブリジット・バルドー、ツイッギーに代表される、モッズ、ミニスカート、ヒッピーファッションにハマっていました。

---高校生の頃からファッションのことが好きだったんですね。大学への進路を決めた時点でパタンナーになろうと決めていたのですか?

わたしがパタンナーになると決めたのは大学生のときです。高校生の時点では、服飾系がいいとざっくりとした考えはありましたが、パタンナーという仕事のことはまだ知りませんでした。大学では、デザインの勉強をしたり、実際に服を作ったり、その他にも美術や科学や服の歴史などといった幅広い内容を学びました。そうして、様々なことをやっていく中で、大学3年生の時期に、デザイナーよりもパタンナーが向いているなと感じて、パタンナーになることを決めました。

---パタンナーになると決めてから、実際にお仕事に就くまでは順風満帆だったのです

か?

大変なことが多かったです。まず、文化女子大ではパタンナーを目指す人はあまりいなかったので、特別講義をしてもらい実技を教えてもらったのですが、パタンナーになると決めてから入社するまでは、圧倒的に実技の練習量が足りないと感じていました。

---では、最後に何か高校生に向けてメッセージはありますか?

自分の好きなことをしていながら、お給料をもらえるというのは私は最高だと思います。好きなことは、趣味の範囲で楽しむ方がいいっていう意見もありますが。私の場合はパタンナーの仕事をしているのが楽しくて、最初の頃は、こんな自分の好きなことをしてお給料をもらっていいんだろうか、って思っていたくらいです。

---実際に好きなことを仕事にしてみて、仕事が嫌になったことはありますか?

何をやっても思い通りにいっていないような気持ちになった時期はありましたが、仕事が嫌いになったことは一度もありません。1つ1つ、色んな方の手を経て洋服が出来上がって来た時は達成感があるし、自分が携わった商品に愛着が湧くので。街を歩いていると、ものすごい量の服であふれているのにも関わらず、自分が携わった服を着ている方をみると一瞬で分かりますし、やっぱりものすごくうれしいです。

---ものすごく説得力があります。好きなことを仕事にできるって素敵なことだと改めて思いました。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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大学生ライター

ちさと

新潟県産の早稲田大学文化構想学部生。動物デザインの物が大好きで、部屋はことりの大きいぬいぐるみだらけ。人生最後の日に食べたいものは鳥皮餃子です。